編集者にとって、出力した校正紙に赤字を書き込むのは日常の作業。デザインへの修正指示、文字修正、クライアントからの要望など、出力して赤ペンを入れるのは、必要不可欠なのです。
今までは以下のようなワークフローでした。
- 初校をカラー出力してデザインをチェック。
- モノクロでコピーした原稿に赤ペンで修正指示を書き込む。
- スキャンで修正指示を取り込む。
- Macでちゃんと表示されるか(読みやすいか)チェックする。
- メールで先方に送る。
普通の作業なのですが、スキャンした文字が粗くて読めなかったり、画像の上には文字が書き込めなかったりと、とても不便でした。まぁ、これでもFAXでやり取りしていた時代より、かなり作業しやすくはなりましたが…。
半分デジタルで半分アナログ。なんとも中途半端ですが仕方ないですよね。
さて、ここからが本題。
プリンターやスキャナがない事務所はどうすればいいのでしょうか?
「え? そんな事務所ないでしょ!」そうです。普通のオフィスにはA3複合機が絶対にあります。ですが、自宅で作業している僕のワークルームには、複合機がな・い・ん・で・す! 購入しようとしたものの、複合機って高いわ、場所は取るわと、自宅にはふさわしいものではありません。ブラザーのMFC-J6573CDWやエプソンのPX-M5041FといったA3複合機なら、4〜5万円ほどと手が届く範囲。でもインクジェットなので、キャプションなどの細かい文字は苦手です。ランニングコストも気になりますしね。
じゃ、いっそのことアナログからの脱却。フルデジタルだ!ってことで、PDF校正紙に直接赤を書き込むワークフローを考えました。
まずはPDF校正紙をモノクロに変換する
デザイナーに用意してもらったPDFに直接文字を書き込むのもいいのですが、カラー原稿に赤を入れても指示がわかりにくいのですよね。なのでモノクロに赤を入れるのが鉄則。モノクロ原稿だと赤字がよく映えますし、修正漏れも少なくなります。じゃ、モノクロに変換するにはどうすればいいでしょう?
Acrobat DCで「色を置換」
メニューバーより「ツール」>「印刷工程」を選択します。
ウインドウの右側にサイドメニューが表示されますので、
「色の置換」をクリックします。
「色を置換」のオプションウインドウが開きます。
「変換のオプション」より「黒を維持」にチェックを入れます。
続いて、変換プロファイルを「Dot Gain 20%」に。
モノクロ変換後に「濃いな」と思ったら、「Dot Gain 25%」「Dot Gain 30%」にしてみて下さい。数字が上がるほど、黒の濃度が薄くなりますよ。
実際にデザインラフを変換してみました。
カラーの原稿
モノクロに変換
きちんとグレーに変換されていますね。
これで赤ペンが入れやすくなります。
ちなみに、この作業はやり直しができません。
ファイルをコピーした上でグレーに変換して下さい。
Acrobatで赤を入れます
Acrobat Proの注釈機能を使用します。
メニューバーより、「ツール」>「注釈」を選択し、
鉛筆のマーク「フリーハンドの線を描画」をクリック。
マウスで自由に線が描けますので、校正記号を挿入。マウスで文字も書けなくはないのですが、読みにくいのでTマークの「テキスト注釈を挿入」を使用します。
簡単ですよね? 簡単な校正でしたらこれでOKですし、
ワークフローが短縮できます。
- PDFをモノクロ変換する
- 赤を入れてメールを送る
ただし、Acrobatで注釈を入れると動作が若干重たいのと
慣れないうちは時間がかかってしまいます。
実際はプリンタで出力して、赤を入れて、
スキャナで取り込む方が速いかもしれません。
紙に書き込むように、PDF校正紙に赤を入れられたら…
最終的に「アナログの良さをそのままデジタルに活かしたい」という欲が生まれました。でも、その欲望を見事に叶えてくれるツールがAppleより出ましたね。
そう、iPad Pro×ApplePencilです!
このツール、使ってみたところ編集者にとってはマストアイテムでした。紙に書いているように赤字を書き込めますし、拡大縮小もらくらく。PDFですので出先でも赤を入れられますし、デスクもかさばらないとイイコト尽くめ。
iPad Pro×ApplePencilの詳細なレビューはまた後日に。